腎臓病と高血圧症は悪循環を引き起こす

腎臓病の発症の危険因子

腎臓病の発症には高血圧症や糖尿病などの病気が重大な危険因子となります。これらは重大な悪循環を引き起こしてしまうので、高血圧や糖尿病はしっかりと養生治療をしましょう。

具体的な対策としては、肥満や運動不足、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣を改善することです。

腎臓のろ過装置が動脈硬化を起こすと

 腎臓は代謝された後の不要な物質をろ過して取り除くための器官です。腎臓のろ過装置を糸球体と言います。糸球体は小さな血管が集まってできいて、高血圧や高血糖が続くと血管が動脈硬化を起こし、ろ過機能が次第に低下していきます。動脈硬化が悪化すると最終的には人工透析が必要になります。

そうならないためにも、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病がある人は、医療機関を受診して治療を受けると同時に日常の養生がとても重要となります。

治療を受けても安心できない

ですが、治療を受けているから安心して良いわけではありません。例えば、高血圧症の治療を受けている患者でも、尿中アルブミンの異常があらわれることがあります。これはまだ治療がまだ十分に行われていない事を示しています。腎臓病は自覚症状がないままに進行するので何よりも早期発見・治療が大切です。


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腎臓病には自覚症状がない

 腎臓病は肝臓病と同じように、自覚症状がないまま進行していくのですが、実はこれが最も怖いことです。症状があればどうにかしようとしますが、症状が現れた時には手遅れということが非常に多いことを知らないといけません。

腎機能低下をそのままにしておくと

腎障害を示す所見や腎機能が低下してるのにそのままにしておくとどうなるか。やがて末期腎不全となり人工透析などの治療が必要となります。

また、腎臓病は心臓病や脳卒中などの心血管疾患になる確率が格段に高くなることが分かっています。そのため早期発見・治療が最も重要となる病気です。

腎臓病の2つの検査

 腎臓病の検査には2つあります。

●ひとつは通常医療機関で尿中の蛋白質の濃度を調べる尿検査
●二つ目は血液中のクレアチニンを調べる血液検査この2つです。

クレアチニンは血液中の老廃物のひとつです。正常であれば腎臓でろ過されて殆ど尿中に排出されるものです。

しかし、腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に溜まってきます。血液中のクレアチニンを「血清クレアチニン値」といい、正常値があるので血液検査でチェックしましょう。

また、腎臓病では尿にもっとも早く異常が出ます。なかでも蛋白尿は重要な兆候となります。腎臓病の発症や進行を抑えるポイントは、尿蛋白があきらかに陽性になると手遅れですからその前に手を打りましょう。

蛋白尿が出る前に対策することが重要ということです。広く行われている検査はアルブミン検査です。これは尿からアルブミンを見出だす検査法です。これは早期の腎症を発見するために有効です。

アルブミンは腎症の初期でも、糸球体から尿中に微量に排出されるので腎臓病の初期でも発見がしやすいものです。

尿中アルブミンの定性検査ではプラスやマイナスで判定されるので、プラスやプラスマイナスが認められた場合には定量検査を行って実際の量を測定したほうが良いでしょう。

 高血圧症の治療中で、尿中アルブミンの異常が認められ、治療効果が十分ではない傾向があるという調査結果があります。

これは高血圧患者約9000人を対象に腎障害の早期診断の指標となるアルブミン尿について調査した「AVA-E Study」で示されたものです。

製薬会社の大日本住友製薬によると、高血圧患者の約4割に尿中アルブミンの異常が示されたそうで、高血圧症に潜む「隠れ腎障害」は多いと予想できるので安心はできません。

高血圧にひそむ‘隠れ腎障害

 調査は全国の医師639人の協力を得て行われた。実施期間は2010年3月までの約6ヵ月間。高血圧症のある患者8963症例を対象に、尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査を実施した。

対象となった患者の平均年齢67.4歳(男性50.7%)、平均身長158.1cm、平均体重61.8kg、平均BMI24.6、収縮期血圧/拡張期血圧は平均138.3/78.7mmHgだった。

 調査データによるとアルブミン検査では、正常域が57.1%だった一方で、異常域は35%、異常域(高度)は7.9%で、これらをあわせたアルブミン尿陽性症例は42.9%だった。

尿蛋白定性検査では、(-)68.2%、(±)13.8%、(+)8.0%、(++)3.5%、(+++)1.3%という結果になった。尿蛋白(-)例でも、30%が尿中アルブミン異常域にあることが分かった。

 高血圧や糖尿病、喫煙なども腎臓病の重大な危険因子です。尿中アルブミンに異常があるときの危険因子が調べられています。それによると、高血圧は1.3~1.7倍、喫煙は1.3倍、糖尿病は1.6倍、それぞれ危険性を高めることがはっきりしました。

 腎臓病の治療は、腎機能の低下原因となっている病気を治療します。たとえば糖尿病性腎症では、治療によって血糖をコントロールします。

あるいは、高血圧症や動脈硬化では薬物療法や、食事などの日常生活の管理が重要となります。

 高血圧症は、薬を飲めば簡単に治るという病気ではありません。患者自身が高血圧の恐ろしさを理解し、コントロールすること無くしては解決ができません。

もちろん、血圧コントロールのために薬はとても重要です。薬の服用を続けることは、高血圧で引き起こされる腎臓病を予防・改善する為にも必須です。